第9回 紀州のドン・ファンの相続税のあれこれ

みなさん、こんにちは!

紀州のドン・ファンの謎の死」。ドラマみたいですね。
ここまで大きな相続はなかなかありませんが、この事件を通して、相続税のあれこれをお話したいと思います。


みなさんもいつかは相続をし、また相続させることになります。
もしかしたら55歳年下の方と結婚するかもしれないのです。

 

この相続の場合、相続税はいくらくらいになるのか

→報道によると、相続財産は50億円だそうなので、ここでは50億円として話を進めます。

亡くなった方を「被相続人」相続する方を「相続人」と言います。
民法が定めた相続人を「法定相続人」といい、この法定相続人の人数によって、相続税の金額も変わってきます。

法定相続人は実際に相続するかどうか関係なく、妻や子、親などの「遺産を相続する権利のある人」のことで、被相続人が亡くなったときに残された家系図により変わってきます。

 

今回の相続では、野崎氏の兄弟が6人とすると、法定相続人は妻と兄弟6人の計7人。

相続税には「基礎控除額」という、「財産がこの金額以下なら相続税がかからないよ」という金額があって、

今回の相続での基礎控除額は、3,000万円+600万円×7人=7,200万円

50億円から見ると、7,200万円も可愛いものですね…。

馴染みのある金額に換算すると、5,000円中72円ということです。

49億円以上に相続税がかかることになります。

 

さて、法定相続人が妻と兄弟だけの場合の法定相続分は、妻が3/4、兄弟(全員)で1/4です。

この法定相続分で相続したとすると、妻は49億円のうち約37億円、兄弟はそれぞれ約2億円を相続することとなり、相続税総額は合計23億円4,000万円ほど。

妻の相続税率は55%ですが、配偶者は法定相続分であれば配偶者の軽減税率が適用されるため、相続税は0円となります。37億円の相続をして、相続税0円…!

兄弟は45%の相続税がかかりますが、それでも手元に1億円は残る計算になります。

 

 

ただしこれは、50億円の財産のすべてが預貯金だった場合の計算で、例えば未上場の株だとか自宅などは、相続税の計算上の価額を計算するので変わってきます。

例えば、住んでいた土地を妻が相続する場合には、330㎡まではその評価額は20%になります

今回の場合、和歌山県田辺市の土地は150坪(約495㎡)らしいので、330㎡を超えた部分は100%の評価額ですが、330㎡までの部分は20%で評価されます。

その他、有名な絵画などがあれば、亡くなった時点での時価で評価します。

 

「結婚」したらすぐに相続人になるのか

 

今年2月に結婚して、野崎氏が亡くなるまで約3ヶ月。結婚してまだ短いですが、相続に関係はあるのでしょうか?

「婚姻届」を出していれば、その婚姻期間が長かろうと短かろうと、法定相続人になります。

逆に、たとえ盛大な結婚式を挙げていて一緒に住んでいる期間が長くても、婚姻届を出していなければ法定相続人ではないので、相続財産は0円です(遺言がない場合)。

別居しててもいいの?もし浮気していたとしたら?

今回の場合、美人妻とは半分別居のようですが、別居していても、仮に浮気をしていたとしても、ケンカばかりで口もきかないような夫婦であったとしても(例えばです)、相続人であることに変わりはありません。

また、仮に妻のお腹に胎児がいた場合、胎児にも相続権があります。

 

愛犬に相続することはできるのか

 

野崎氏は、愛犬のイブちゃんを溺愛していたようです。著書に「犬なのに猫可愛がりしていた」とあって、うまいこと言うなぁと思いました。遺言で愛犬に相続することは可能なのでしょうか?

→アメリカでは多くの州で、遺言によって(具体的には遺言信託の形を取るそう)ペットに一定の財産を相続させることも認められているとのことです。

でも日本では、たとえ猫可愛がりしていた犬といえども、法律上は人以外は「物」として扱われるので、ペットに遺産を相続させることはできません。しかしイブちゃんの死も謎が多いですね…。

 

もしも愛人に全財産をあげると遺言があったら

野崎氏は美人妻をとても愛していたようですし、遺言もないようですが、万一、「別の愛人に全財産を相続する」という遺言があったらどうなるのでしょうか?美人妻は1円も相続できないのでしょうか?

→相続には遺留分というのがあって、相続人に最低限度の財産が法律上確保されています

そして兄弟には遺留分はないのですが、今回のケースでは妻には相続財産全体の1/2の遺留分があります。法定相続分3/4よりは少ないですが、それでも25億円ほどは確保されることになります。

 

相続人が被相続人の殺害に関与していた場合は

今回の事件、うさん臭いにおいがぷんぷんしますが、憶測でものを言うのは慎まないといけないので、今回の事件ではなく、一般論としてですね、もしも、相続人(もらう人)が被相続人(亡くなった人)の殺害に関与していたとしたらどうなるのでしょうか?

→財産狙い等で、被相続人の殺害(または殺害未遂)で刑に処せされた相続人は、「相続欠格」といい、相続権を失います。また、自分が殺害してなくても、被相続人が殺されたことを知りながら犯人を告発しなかった場合でも相続欠格の対象となります。

ただし、相続欠格となるのは故意に殺した(殺そうとした)場合であり、過失による致死の場合には相当しません。

 

貢がれた女性たちは贈与税の申告をしなくてよかったのか

 

さて、野崎氏は「美女4,000人に30億円を貢いだ」とのこと。

普段貢がれることとは無縁の私は、「ちょっとちょっと~、この美女たち、ちゃんと贈与税の申告したのかしら?」と妬みではなく税理士として思うわけです。

1年間に110万円までならもらっても贈与税はかかりません。でも30億円だと…?

計算すると、4,000人に30億円って平均1人75万円です。

あくまで平均ですが、これだと贈与税の申告の義務はなさそうです。それにしてもこの記事書いていると75万円が微々たる金額に思えてきて金銭感覚がおかしくなってきました。

 

とにもかくにも、美人妻は、亡くなった日から10ヶ月以内に相続税の申告をすることになります。どんな税理士が引き受けるのだろう…。